東京写真展資料・よびかけ文                                表紙へ
心に刻まれた、あの時の光景一一。「1960年・三池写真展」へのご案内

 1960年は、歴史的な安保条約改定反対闘争とともに、三井鉱山が行った2千人余の「人員整理」と1200人余の労働者の指名解雇をめぐって、労働組合とこれを支援する多くの人々が一年有余にわたって抵抗した「三池闘争」によって記憶された年でありました。石炭から石油への産業エネルギーの構造的転換を、働く者の犠牲で成し遂げようとする政策が進められる過程で起こったのです。そして、その時代の社会の現実は、土門拳「筑豊の子どもたち」をはじめ多くの文学や映像、写真の記録として残されました。

 あれから40年余の歳月が流れました。そして昨年秋、三人の写真家(プロフィール参照)の代表作を中心にした写真展が、三池労組の後援のもと、大牟田市で大盛況のうちに開催されました。私たちは、その経験を受けて、東京で、新しい視点で「1960年・三池写真展」を開催したいと考えました。

 現在、「構造改革」の名のもとに多くの人々が「痛み」を強いられています。そんなとき、「三池」は、遠い過去から何かを訴えてくるようです。彼らの声を開いてみようではありませんか。彼らのながい抵抗を支えた「たましい」とは、いったいどのようなものだったのでしょうか。「三池」以降、日本社会は高度成長からバブル経済へ、その破綻と出口の見えない不況へと、さまざまの激変を体験してきました。何かどう変わったのでしょうか。現実を見つめ、これからのことを考えるうえで、写真展は必ずやヒントを与えてくれるでしょう。私たちは、それぞれ政治的、社会的立場を必ずしも同じくするものではありませんが、「三池」をつながりとして力を合わせ、交流しようと思った次第です。

 あの頃の二〇代の若者は、それぞれの道のりを経て、いま六〇代を迎えています。みなさんには、かつての青春の記憶を訪ねてほしいのです。そして、あの闘魂を21世紀を生きる次代の人々に継いでもらう途を探ってみようではありませんか。

 私たちの社会は、いま、働く者にとってますます生きにくい時代になっています。ひとりぼっちの若者や高齢者が増えています。誰かが先行きの不安とさまざまな困難を抱え込んでいます。そんな中だからこそ、どうか時間をつくって、会場に足を運んでほしい。写真展にはさまざまな企画(別項参照)が用意されています。そこで、新たな出会いをつくってほしいのです。過去の出来事のなかに、現代と未来を解くカギを発見するかもしれないのですから。

 私たちの企画と事業に対するご支援を心からお願い致します。

2002年9月吉日

呼びかけ人(アイウエオ順)                     土本典昭(映画監督)
梓沢和幸(弁護士)                       奈良恒子(声楽家)
池山吉之助(会社会長)                    樋口篤三(労働運動家)
上本雅之(東京都地方労働委員会委員)          藤崎良三(全労協議長)
川上 徹(同時代社代表)                   矢沢 賢(前・都労連委員長)
宗 邦洋(三池労組出身)                   山崎耕一郎(社会主義協会代表代行)
津和 崇(賃金問題研究家)                  吉田嘉清(平和事務所)
高柳 新(全日本民医連名誉会長)             〔後援〕芳川勝(三池炭鉱労組組合長)
中野義人(東京水道労組本部)